ことばを使わなくても、感じたことは分かち合える。 —「”て”と”からだ”でひらく鑑賞ワークショップ」レポート
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2026.03.11(水)
2026年2月23日(月・祝)、みんミはmina_te_mari(ミナテマリ)とともに、オンライン鑑賞ワークショップを開催しました。
今回のプログラムは、「ことばにしなくても、作品と出会うことはできる。声に出さなくても、感じたことは分かち合える。」そんなコンセプトのもと、表情・手・からだの動きといった「ことば」以外のコミュニケーションを通して美術作品を鑑賞し気持ちを共有する、90分間のワークショップです。
手話をはじめとする“め”“て”“からだ”による表現を通じて世界の見え方をひらくmina_te_mariさんとのコラボレーション。mina_te_mariのSasa-Marie(ササ・マリー)さんとYumiko Mary KAWAI(河合祐三子)さんのお二人がファシリテートしてくださいました。
鑑賞したのは、大正から昭和にかけて活躍した洋画家、髙島野十郎(たかしま・やじゅうろう)の作品です。2025年7月の千葉県立美術館を皮切りに、福岡県立美術館、豊田市美術館へと巡回している「没後50年 髙島野十郎展」。Sasa-Marieさんがこの展覧会で髙島野十郎作品と出会い、「この作品で鑑賞ワークショップがしたい!」と強く感じたことが、今回の出発点でした。「ことばを介さなくても、障害のあるなしに関係なく体験を分かち合える素敵な場がつくれるのではないか」——そんな想いから、この企画は始まりました。

写真:「没後50年 髙島野十郎展」展覧会カタログとフライヤー(会場:豊田市美術館)
まずは、からだをほぐすところから
はじまりは、お二人によるウォーミングアップから。Maryさんの動きにあわせて手や指を動かす運動からスタートし、顔の表情を動かしたり。また、Marieさんと一緒に両手を動かして、画面の中に「額縁」をつくる動きも行いました。

ウォーミングアップで動作を促すMaryさん

「額縁」をつくるMarieさん
参加者から「Zoomの画面という枠の中でできる表現がある」という印象的な気づきがあったように、オンラインという環境そのものが、鑑賞の道具になっていきました。
“て”と“からだ”で作品をみる
ウォーミングアップのあとは、鑑賞の時間へ。野十郎作品を前にして、それぞれの「額縁」の中で、参加者はジェスチャーや表情を使って表現していきます。
ウォーミングアップのあとは、鑑賞の時間へ。野十郎作品を前にして、それぞれの「額縁」の中で、参加者は上半身の動きやポーズ、表情を使って表現していきます。
まず1分ほどじっと作品を鑑賞。
その後、MarieさんとMaryさんに導かれながら、それぞれが感じたことを思い思いの方法で表現したり、順番に表現をバトンのようにつないだりしました。また、絵の中に描かれた赤い実を自分の手で持っている「つもり」で隣の画面の人に渡したり、隣の人から受け取る「つもり」で動いたりなど、個々の画面を飛び越えて動く場面もありました。
参加者の表現は実にさまざまです。
作品の全体的な印象をからだで表す人、
作品の中に入り込んで作品と向き合う自分を表す人、
作品から「風」や「空気」の動きを感じ取り、それを身体の動きで表す人。
見えないものにまで意識をひろげていく人もいました。
同じ作品を見ているのに、表現はまったく違う。その違いが、場をいっそう豊かなものにしていました。
さまざまな表現に、MaryさんもMarieさんも始終とてもにっこり。
最初は少し戸惑っているように見えた参加者も、他の人の動きをみたり、MaryさんやMarieさんのリアクションに背中を押されたのか、だんだんと表現がほぐれていったりと、のびやかな動きが生まれていました。
写真:参加者の動きを楽しそうに見るMarieさんとMaryさん。参加者の動きを真似したりもしていて、とても楽しそうでした。
参加者の声
鑑賞のあとの感想を共有する時間では、参加者からこんな声が寄せられました。
・「て」と「からだ」の動きに変換することで、絵画の中に流れるリズムや音をより感じられるようになった気がします。
・絵の中に入る体験のように感じました。絵からのエネルギーをそのまま表現している方もいて、見方を共有できたのが印象的でした。
・鑑賞スタイルは、もっと自由でいいんだなと視野が広がりました。
・ことばではなく身体で表すことで、どんなふうに見ているのかが伝わる体験が新鮮でした。より深く理解することができました。
・作品を直感的に身体で表現するというよりも、作品体験を自身で言語化し、それを身体で表現するという、作品解釈→身体翻訳という体験と感じました。伝えることの難しさと面白さを感じました。
今回のワークショップでは、最後の感想の共有まで、参加者は一言もことばを発しません。MarieさんとMaryさんの手話と、手話通訳の音声の日本語だけが流れます。からだの動きや表情で、感じたことは届けられる。そして画面の枠という制約が、むしろ表現の輪郭をはっきりさせてくれる。
オンラインならではの鑑賞体験が、そこに立ち上がっていたように感じる時間となりました。
感覚を使って、違いを活かし合う。
そんな鑑賞の場を、みんミではこれからもいろいろな形でつくっていけたらと思います。
テキスト・鹿島萌子(みんなでミュージアム事務局)
記録:みんなでミュージアム
イベント概要:
mina_te_mari × みんなでミュージアム
“て”と“からだ”でひらく、あたらしい鑑賞ワークショップ(オンライン開催)
日時:2026年2月23日(月曜日・祝日)
①14:00〜15:30、②17:30〜19:00(90分)
会場:オンライン(Zoom)
情報保障:手話通訳(①瀬戸口裕子、山田泰伸/②岡島珠実、山田泰伸)、Zoom字幕
ファシリテーター:Sasa-Marie、Yumiko Mary KAWAI
協働企画:mina_te_mari
*本ワークショップの実施にあたり、福岡県立美術館で公開されている作品画像を使用させていただきました。
鑑賞したのは、6点。ぜひチェックください!
髙島野十郎《秋陽》昭和42(1967)年頃 45.5×53.0cm
髙島野十郎《太陽》昭和36(1961)年以降 21.8×27.2cm
髙島野十郎《無題》昭和42(1967)年ごろ 45.8×60.8cm
髙島野十郎《からすうり》昭和10(1935)年 61.0×45.2cm
髙島野十郎《月》昭和37(1962)年 41.0×31.8cm
髙島野十郎《蝋燭》大正時代(1912-26)22.7×15.6cm








