ロゴマーク:みんミ みんなでミュージアム

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目次:活動の記録

みんなでつくる、伝わるギャラリートーク ― 埼玉県立近代美術館との協働から

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  • 報告レポート

2026.02.17(火)

みんなでミュージアム(以下、みんミ)は、障害のある当事者コーディネーターとともに、ミュージアムとの環境づくりに取り組んでいます。2024年、埼玉県立近代美術館で初めての試みとなる企画展の手話通訳付きギャラリートークが開催され、みんミは埼玉県立近代美術館と協働し、アクセシビリティの向上に取り組みました。2025年度も引き続き、埼玉県立近代美術館で開催された「Nerhol 種蒔きと烏 Misreading Righteousness」展および「野島康三と斎藤与里 ―美を掴む手、美を興す眼」展において、手話通訳のコーディネートや障害のあるミュージアム・アクセス・コーディネーター(以下、みんミコーディネーター)との振り返りの場づくりなどを通して協力しました。あわせて、埼玉県内で活動する手話通訳者とのつながりづくりも意識し、地域で継続して実施していくための体制について検討を重ねました。

埼玉県立近代美術館では、ひとつの企画展につきギャラリートークを2回実施しており、2回目が手話通訳や文字表示がつく情報保障つきギャラリートークになります。そこで、1回目のトークには手話通訳者にも参加してもらい、進行や会場の雰囲気を共有しました。終了後には、学芸員・手話通訳者・みんミで、文字通訳機器の位置を踏まえた手話通訳者と学芸員の立ち位置やトークに出てくる言葉のニュアンス、照明やマイクの要不要などを確認し、2回目のギャラリートークに向けた調整を行いました。

情報保障つきギャラリートーク当日には、聴覚障害のあるみんミコーディネーターにも、ほかの来場者と同じ立場で参加してもらい、実体験に基づく意見を共有してもらいました。「ポイントごとにライトが当たって見やすかった」「重要な単語を文字で示してもらえたことで理解が助けられた」といった声がある一方、展示室の明るさによって文字表示が見づらくなる場面があることも指摘されました。
また、「手話と文字を同時に見ることはできないが、両方があることで理解が支えられる」「作品を見る時間と説明の時間を分けてほしい」といった声から、情報保障の重なりや鑑賞の進め方の重要性が共有されました。2つの企画展を通じて継続して協働することで、事前準備やみんミコーディネーターからのフィードバック、手話通訳者とのつながりが今後に向けた大きな蓄積となりました。

 

今回の協働においてみんミが大切にしたのは、「手話通訳をつけること」そのものをゴールにしないことでした。美術館と手話通訳者がつながり、互いの立場から意見を共有しながら、よりよい形を一緒に考えていくことを重視しました。ギャラリートークごとに手話通訳者が変わったとしても、情報保障に必要な事前準備のポイントは大きく変わりません。そのため、できるだけ手話通訳者の立場から意見やより手話通訳がしやすくなるアイデアを出してもらい、あわせて学芸員が抱える不安や疑問を話し合う場を設けました。

こうした積み重ねは、聴覚障害のある参加者にとってだけでなく、学芸員や通訳者にとっても、より話しやすく、伝えやすい環境づくりにつながると考えます。みんミは今後も、美術館や手話通訳者、みんミコーディネーターと対話を重ねながら、「続けていける情報保障付きギャラリートーク」のかたちを、少しずつ育てていきたいと考えています。

最後に、今回ご協力いただいた手話通訳者とみんミコーディネーターからの感想を紹介します。

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今回のギャラリートークの情報保障について、先ずスタッフ側での下見・事前打ち合わせを経て、当事者に見て体験してもらい意見・提案を頂くことでスタッフ側の試み(スポットライト・スケッチブックの文字表示など)への評価がもらえると共に新たな課題を見つけ対策していく、今回の様な流れはとても良いと思います。
手話通訳にとっても、下見・事前打ち合わせをすることによって通訳環境の確認・気付きや提案ができ、当日までに準備できることは多く良い情報保障の提供に繋がります。当日も学芸員さんがトークの合間に「こんな感じで大丈夫ですか」と何度か声を掛けてくださり、当日の振り返りでも活発に意見が交わされ、皆が良い情報保障を目指し心ひとつにして取り組んでいて、その熱い想いが伝わってきました。この情報保障、実は聴覚障害者に限らず聞こえる人にも役立っていたと感じています。 (小谷田路代/「Nerhol」展手話通訳者)

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埼玉県立近代美術館で開催中の企画展「野島康三と斎藤与里 ―美を掴む手、美を興す眼」にて、情報保障つきのギャラリートークに参加しました。

入口から出口までを約1時間ほどかけて、埼玉県出身の写真家・野島康三と洋画家・斎藤与里の足跡をたどりました。トークでは、戦前戦後を通して生きたふたりの芸術家の生き方と、それぞれの個性を聞くことができました。彼らがどのような時代背景の中で活動し、美術運動に関わっていたのか。限られた資料からわかった当時の様子や流行、考え方なども紹介され、時代背景がありありと感じられました。野島の作品からは、現代ではあまり見かけることのない、整えられていないどこか生々しいほどの表情の魅力を。与里の作品からは、作風の変化の先にたどり着いた素朴さと心境が伝わってくるような表情を、とても興味深く鑑賞することができました。

こうした感想を持てたのは、学芸員による解説に、手話通訳と透明ディスプレイによる字幕表示が付いていたからです。きこえない人・きこえにくい人・日本語を母語としない人にとって、リアルタイムの解説を理解するには支援が必要です。これまで十分なサポートのある場は多くありませんでした。私はいつの間にか、「聞き取れなかったらつまらない」「わからないまま時間が過ぎてしまうのではないか」と考えるようになり、美術館のトークイベントから足が遠のいていました。

そんななかに参加した、手話通訳者の丁寧な表現と、透明ディスプレイと音声認識を使った字幕表示が組み合わさったギャラリートーク。作品・学芸員・字幕モニター・手話通訳者は互いに近い位置にまとまり、常に同時に視界に入る配置となっていました。目線を大きく動かすことなく解説を聞ける点がとても良かったです。また、ディスプレイが透明なので、作品の印象を邪魔しません。解説と作品を同時に把握しやすく、展示全体の理解が一段と深まりました。持ち運びできるディスプレイとともに移動することができるので、遅れることも集団から外れることもありませんでした。また、埼玉県の手話通訳者は、作品の感覚や背景までしっかりと伝えてくれたので、文章や音声だけでは受け取りにくい部分も、より理解しやすかったと感じています。

この日、同じ空間にいる全ての参加者と平等に情報を受けている実感がありました。展示そのものの魅力に加え、参加しやすい環境が整えられていたことも含めて、印象に残る時間となりました。美術館は、作品を見る場所ではなく、共に理解し、共に感じる場所であってほしい。そのことを、あらためて実感した一日でした。(小谷野依久/「野島康三と斎藤与里」展みんミコーディネーター)

 

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コメント寄稿:小谷田路代(手話通訳者)、小谷野依久(ミュージアム・アクセス・コーディネーター/難聴)
テキスト:鹿島萌子(みんなでミュージアム事務局)

写真:みんなでミュージアム事務局

展覧会およびギャラリートーク情報:
「Nerhol 種蒔きと烏 Misreading Righteousness」
2025年7月12日(土曜日)ー10月13日(月曜日・祝日)
主催:埼玉県立近代美術館、朝日新聞社

担当学芸員によるギャラリートーク
実施日時:
1回目:8月31日(日曜日)午後3時から
2回目(手話通訳、文字表示付き):9月20日(土曜日)午後3時から
協働:NPO法人エイブル・アート・ジャパン
協力:株式会社ジャパンディスプレイ

「野島康三と斎藤与里 ―美を掴む手、美を興す眼」
2025年11月1日(土曜日) ~ 2026年1月18日(日曜日)
主催:埼玉県立近代美術館、東京新聞

担当学芸員によるギャラリートーク
実施日時:
1回目:11月 9日(日曜日)午後3時から
2回目(手話通訳、文字表示付き):12月14日(日曜日)午後3時から
協働:NPO法人エイブル・アート・ジャパン
音声字幕協力:株式会社Magnolia Unitas