安心して参加できる六本木アートナイトをめざして
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- 報告レポート
2026.02.27(金)
六本木アートナイトは、六本木の街を舞台に、アートや音楽、パフォーマンスなど、さまざまな作品が街なかにあらわれ、非日常的な風景が広がるアートの祭典です。毎年開催されるこのアートナイトの中で行われている「インクルーシブ・アート・プログラム」は、年齢や障害の有無、感じ方の違いに関わらず、さまざまな人が無理なく参加し、ともに時間を過ごすことを大切にしてきました。
2019年からはNPO法人エイブル・アート・ジャパンが企画協力として関わり、2025年は「みんなでミュージアム」として担当しました。Zoomを使ったオンライン鑑賞会と、現地で作品を巡る鑑賞ツアーを組み合わせて企画。作品を「どう鑑賞するか」だけでなく、「どうしたら、その場に安心していられるか」「どうしたら、自分なりに楽しめるところまでたどり着けるか」。そんなことを考えながら、運営を行いました。
■オンライン鑑賞会「おばんです〜!ふとんの国から六本木アートナイトを楽しむぴあっとごろごろ鑑賞会」

オンライン鑑賞会の一場面の様子。鑑賞作品は、イム・ジビン《あなたは一人じゃない》。夜の様子の写真と中継映像を組み合わせて鑑賞した。
オンライン鑑賞会は、さまざまな事情で会場に足を運ぶことが難しい人にも、六本木アートナイトを届けたいという思いから生まれたプログラムです。今回は、福島在住の天水みちえさん、岡﨑幸治さん、愛媛在住の中田帆乃花さんにファシリテーターをお願いしました。「ふとんやソファでごろごろしながら」というコンセプトの通り、それぞれが心地よい場所から参加し、現地からの映像中継や事前に撮影した作品写真を見ながら、夜の六本木の雰囲気や作品の存在感を参加者に感じてもらいました。
■鑑賞ツアー「からだとことばでひらいて楽しむ鑑賞ツアー」
鑑賞ツアーのひとつ目「視覚コミュニケーションで楽しむ鑑賞アワー」では、聴覚障害のあるファシリテーター・Sasa-Marieさんとともに、手や表情、ジェスチャーなど、声に頼らないコミュニケーションで作品を楽しみました。参加者みんなで表現してみたり、ペアになって表現してみたりと、形を変えながら進むうちに、はじめは少し戸惑っていた参加者の動きや表情も、次第にのびのびとしていきました。「どう感じているか」を持ち寄ることで、鑑賞の時間がやさしくひらかれていく様子が印象的でした。
- ツアーの様子。鑑賞作品は奥山太貴《現在地 feat.六本木アートナイト》。
- ツアーの様子。鑑賞作品は島田正道《Birds fly around with you》。
二つ目の「異なる視座で楽しむ鑑賞アワー」では、車椅子ユーザーのファシリテーター・藤倉千裕さんと一緒に、見る高さや距離を変えながら作品を鑑賞しました。しゃがんでみたり、少し離れてみたり、逆に可能な限り近寄ってみたり。いつもとは違う視点から作品を見ることで、「こんなふうに見えるんだ」という気づきが生まれていきました。参加者からは、「低い視点だと世界に入り込んだ感じがする」「これからの鑑賞でも試してみたい」といった声も聞かれ、視点の違いが新しい発見につながる手応えが感じられました。
- ツアーの様子。鑑賞作品は、リン・ジエウェン/ラバイ・イヨン《赤い恐竜》《緑の恐竜》
- ツアーの様子。鑑賞作品は、イム・ジビン《あなたは一人じゃない》。
そして今回、初めての取り組みとなったのが、三つ目のツアー「はじめての六本木アートナイトを安心して楽しむ鑑賞アワー」です。このツアーは、障害特性のある人や、六本木アートナイトに初めて参加することに不安を感じている人を対象に、ミュージアム・アクセス・パートナーと参加者が1対1で会場を巡るプログラムです。ミュージアム・アクセス・パートナーは、「ミュージアムを楽しむサポートをする人」。作品を解説する役割ではなく、「一緒に歩き、一緒に迷い、一緒に楽しむ」ことを大切にしています。
これまでのみんミの実践同様に、ツアーの前には、参加者とパートナーがオンラインで顔合わせを行いました。お互いの自己紹介から始まり、「どんな作品が気になりますか」「どんなふうに過ごしたいですか」など話は広がっていきます。そんなやりとりを通して、少しずつ気持ちや希望を共有していきました。また、オンラインができない参加者には「しおり」を作成し、事前に送付。この時間は、一緒に歩く人を知り、当日をスムーズに進めるためだけでなく、「不安や希望を話してもいいんだ」と感じてもらうための、大切な準備の時間でもありました。

参加者と共有した「しおり」の一部。
当日はそれぞれ六本木駅や乃木坂駅で集合し、参加者のペースに合わせて、アートナイトの会場を巡りました。たくさんの作品を見ることよりも、「今、この場所にいられている」という感覚を大切にしながら過ごしてもらった時間でした。
もちろん、課題もありました。屋外作品が中心となる六本木アートナイトでは、触れて楽しめる作品が限られていたり、当日の混雑が想定通りにいかなかったりすることもあります。また、1対1だからこそ、パートナーの関わり方や役割の共有、下見や情報共有のあり方など、これからも丁寧に考え続けていく必要があると感じました。それでも、「一人では来られなかったけれど、来てよかった」「安心して歩けた」という感想をいただきました。
- ツアーの様子。鑑賞作品は、胡宮ゆきな《平和なんて朝飯前(10XL) vs 平和なんて朝飯前(10XL)》。
- ツアーの様子。鑑賞作品は、荒井 理行《Like paintings》。
インクルーシブ・アート・プログラムは、特別な人のためだけの企画ではありません。誰かにとっての「不安」や「苦手」を、少しずつみんなでほどいていくことで、参加者も、ファシリテーターも、パートナーも、運営スタッフも、同じ場・同じ作品・同じ時間を一緒に楽しめるようにする試みです。みんミはこれからも、対話と工夫を重ねながら、アートや街との出会いのハードルを、ゆっくりと下げていきたいと思います。
テキスト執筆:鹿島萌子(みんなでミュージアム事務局)
写真:六本木アートナイト実行委員会、みんなでミュージアム事務局
<イベント概要>
「六本木アートナイト2025」
開催時期:2025年9月26日(金)から28日(日)
開催場所:六本木ヒルズ、森美術館、東京ミッドタウン、サントリー美術館、21_21 DESIGN SIGHT、国立新美術館、六本木商店街、その他六本木地区の協力施設や公共スペース
インクルーシブ・アート・プログラム
鑑賞ツアー「からだとことばでひらいて楽しむ鑑賞ツアー」
ツアー① 視覚コミュニケーションで楽しむ鑑賞アワー
日時:9月26日(金曜日) 18時30分から20時30分
ファシリテーター:Sasa-Marie(ササ・マリー)(ろう詩人/SignPoet)
手話通訳:瀬戸口裕子、山崎薫
ツアー② 異なる視座で楽しむ鑑賞アワー
日時:9月28日(日曜日) 13時から15時
ファシリテーター:藤倉千裕(デザイナー/車椅子ユーザー)
ツアー③ はじめての六本木アートナイトを安心して楽しむ鑑賞アワー
日時:9月28日(日曜日) 16時から18時
同行者:ミュージアム・アクセス・パートナー
オンライン鑑賞会「おばんです〜!ふとんの国から六本木アートナイトを楽しむぴあっとごろごろ鑑賞会」
日時:9月27日(土曜日) 19時から21時
会場:オンライン
ファシリテーター:
・天水みちえ(精神障害ピアサポーター、ぴあっともくもく主宰/福島在住)
・岡﨑幸治(精神・発達・ひきこもり当事者会リカバリー福島代表、リカバリーカレッジうつくしま学長/福島在住)
サブファシリテーター:
・中田帆乃花(愛媛在住)
主催:東京都、公益財団法人東京都歴史文化財団 アーツカウンシル東京、港区、六本木アートナイト実行委員会【国立新美術館、サントリー美術館、東京ミッドタウン、21_21 DESIGN SIGHT、森美術館、森ビル、六本木商店街振興組合(五十音順)】
企画協力:NPO法人エイブル・アート・ジャパン










