「壁を越えて」ひらかれた鑑賞アワー @エスパス ルイ・ヴィトン東京実施レポート
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2026.02.27(金)
2025年12月20日、エスパス ルイ・ヴィトン東京にて、みんミお出かけ企画第2弾「障害のある人もない人も一緒に『“Hors-les-murs(壁を越えて)”たのしむ 鑑賞アワー』」を開催しました。アンディ・ウォーホルの展覧会「ANDY WARHOL – SERIAL PORTRAITS」を舞台に、通常開館前の静かな空間で、参加者みんなでゆったりと鑑賞を楽しみました。
募集開始後は、定員を大きく上回るお申し込みをいただきました。当日の参加者は、小学生から大人までと年齢層も幅広く、発達障害のある人、聞こえない人・聞こえにくい人など、さまざまな背景のある人々が集まりました。
鑑賞アワーは、ろう者アーティストユニットmina te mari(ミナテマリ)のSasa-MarieさんとYumiko Mary KAWAIさんのファシリテーションのもと、手や表情、ジェスチャーなど、言葉に頼らないコミュニケーションを大切にしながら進んでいきました。参加者は、はじめは少し緊張した様子も見られましたが、身体で感じたことを表現していくうちに、だんだんと笑顔ややりとりが増えていきました。場の空気もやわらかくほぐれ、静かなとても暖かい交流が生まれていました。
今回の運営では、申込時に文字通訳を必要とする方がいることが分かり、使用できるアプリや会場環境など、さまざまな制約がある中で、みんミ・エスパス ルイ・ヴィトン東京・ミナテマリの三者で相談。今回できること、難しいことを事前に参加者に共有し、ご本人の確認を得たうえで当日を迎えるなど、無理のない実施のかたちを一緒につくる大切なプロセスを経験しました。
参加者からは、「言葉がなくても気持ちは伝えられると実感した」「作品を理解しようとするより、楽しむことに意識が向いた」「他の人の見え方を知ることで鑑賞が広がった」といった声が寄せられました。障害のある・なしに関わらず、その場にいる一人ひとりが違いを持ち寄り、分かち合う時間は、まさに“壁を越える”体験となりました。
これからもみんミは、対話と工夫を重ねながら、誰もが安心して参加できるアートの時間を育てていきたいと思います。
この素敵な時間を一緒につくってくださったのが、みんミパートナーの吉村優一(よしむら・ゆういち)さんです。
吉村さんの視点から当日の様子をまとめて、寄稿してくださいました。
あわせて、ぜひお楽しみください。
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鑑賞アワー感想:ことばと感覚の垣根を越えて
〜mina te mari(ミナテマリ)のおふたりを迎えて〜
1. 「伝える側」にろう者がいる意義
今回のプログラムで何より印象的だったのは、手話を第一言語とするmina te mariのおふたりがファシリテーターを務められたことです。似たような取り組みが、最近では京都国立近代美術館でのワークショップ(2025年12月)などがあります。
聴者が話し、それを単に通訳する。つまり、ろう者・難聴者が常に聴者側からの情報の受け取り手となるのではなく、「ろう者・難聴者が発信側となる」という取り組みは、日本ではまだ決して多くありません。東京都立の施設では助成金等により手話通訳をつける取り組みが増えていますが、今回のように民間企業による私設美術館で、手話通訳つき。またろう者・難聴者が主体となったイベントが提供されたことは、非常に大きな意義があると感じます。
2. 視覚言語でひらく、新しい作品との出会い
鑑賞アワーでは、ろう者、聴者、手話ができる難聴者など、多様な背景を持つ参加者が集まりました。全員が「視覚」を通じて情報を共有し、表現を工夫する姿が印象的でした。
プログラムの内容は、特定のテーマに沿った作品群の中から、自分が気に入った絵画やポートレートを選び、それを手話や身振り(ジェスチャー)で表現するというワークを行いました。
実際の作品を目の前にしながら、ちょうど良い作品数で、一つひとつの作品とじっくり向き合うことができたと思います。
3. 情報保障の「道具」を使いこなすために:UDトークの活用
今回のイベントでは、UDトークも使われました。アクセシビリティをより向上させるためのポイントも再確認できました。
他団体での取り組みの参考にもなると思うので、2、3記述します。
(1)単語登録の活用
UDトークは、無料版でも単語登録が可能です(
(2)Bluetoothイヤホン
車座になって、話者が次々に代わる場合は、Bluetoothイヤホンを使うのも良いと思います。「AmiVoice Front WT01」がUDトークなどでもオススメの商品として紹介されています。
(3)情報収集
UDトーク公式YouTube再生リスト(これらの中から自組織に必要な動画をピックアップして視聴するだけでも、運用のスムーズさが格段に変わるはずです)、有償の団体向けのオンライン相談会や、不定期でウェビナーなども開催されています。
4. おわりに
久しぶりにmina te mariのおふたりとお会いし、
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寄稿:
吉村優一(ミュージアム・アクセス・パートナー)
執筆:
鹿島萌子(みんなでミュージアム事務局)
写真:
みんなでミュージアム事務局
展覧会情報
「ANDY WARHOL – SERIAL PORTRAITS」展
会期:2025年10月2日〜2026年2月15日
会場:エスパス ルイ・ヴィトン東京
住所:東京都渋谷区神宮前5-7-5 ルイ・ヴィトン表参道ビル7階
作品:
左上写真:
《TEN PORTRAITS OF JEWS OF THE TWENTIETH CENTURY》(20世紀のユダヤ人10人の肖像)
1980年、ベラム紙にシルクスクリーン10点 (個別額装)各127.5×107.5×3cm
右上・左下写真:
《SELF-PORTRAITS [セルフポートレート]》
1977年頃、キャンバスにアクリル絵具とシルクスクリーンインク、203×203cm
右下写真:
《THE SHADOW》(シャドー)
1981年、ミュージアムボードにシルクスクリーン、102.5×102.5cm








