ロゴマーク:みんミ みんなでミュージアム

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目次:活動の記録

みんなで美術館を楽しむ体験の第1歩 ――北海道立函館美術館《つくる冒険》展の実践から

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  • 報告レポート

2025.09.24(水)

今回、日本財団DIVERSITY IN THE ARTSより相談を受け、障害のある人(主に、視覚に障害のある人や聴覚に障害のある人)との鑑賞プログラムを2日間で開催しました。
鑑賞した展覧会は、「つくる冒険 日本のアール・ブリュット45人―たとえば、「も」を何百回と書く。」です。

この展覧会は、2025年7月12日(土)から9月7日(日)まで北海道立函館美術館で開催され、みんなでミュージアムは「みんなで美術館を楽しむ体験の第1歩」として、8月24日(日)・26日(火)の日程で鑑賞プログラム「美術館へおでかけ!ともにみる冒険」を担当しました。2日間のプログラムのなかで、函館市に住む障害のある方、ない方、美術館で活動されているボランティアの方、美術館の学芸員の方などなど、みんなで美術館を楽しむ時間を共有しました。
今回のレポートでは、1日目は3つのグループのうち1つに、2日目は2つのグループのうち1つに加わり対話を交えながらの鑑賞体験についてレポートします。

1日目

 

1日目は、見えない人、見えにくい人を中心とした鑑賞プログラムでした。少人数のグループに参加者が分かれ、自己紹介などのレクリエーション後、鑑賞タイムがはじまりました。
展示室に入ってまずは、参加者のひとりが会場の数ある作品の中から気になるひとつをグループに共有して、同じ作品について質問し合いました。
函館美術館は、ランニングコースとしても有名な五稜郭公園のすぐ近くに位置します。

グループの中には、五稜郭をいつも走っているランナーの方が多くいらっしゃいました。(プログラムが始まる前にも走って来たとのことです!)そこで、作品のひとつ、駅伝のユニフォームをモチーフに描いた、松本 寛庸さんのカラフルな絵画に注目が集まりました。
鑑賞中にでた話の中には、この作品のつくり手は、使った色のえんぴつで1か所塗り終えると、かならず、同じ色は使わずにまだ使っていない新しい色を使う……といった制作過程の情報から、使った色から次の色へ、色えんぴつがバトンパスのように手渡しでめぐる感覚を連想させるとの感想がでてきました。
また、細やかな色使いと描写が、走るときの血液や酸素が急速に循環していく身体の変化にも似ている要素がある、という話からもしかしたらこの絵のつくり手もランナーなのかも?という想像する意見もでました。

 

タスキをかけた駅伝ランナーが描かれた絵画の前で話している写真。絵を鑑賞している5名中3名は、走りやすい運動着の服装で写っている。

 

作品を見たあとは、美術館のボランティア「いちいの会」の方が運営する美術館に併設するカフェのメニューでティータイムへ。
おいしい飲み物をいただきながら、あらためて作品の感想や今回の鑑賞会で感じたことなどを共有しました。
その後は、解散してフリータイムとなりました。閉館時間までまだ時間があるので、展示作家の立体作品のさわれるレプリカを鑑賞したり、展示室に戻って、気になった作品を改めてみにいくなど、美術館を楽しむ場となりました。

 

コーヒーやジュースが置かれているテーブルで参加者それぞれが展覧会の感想について話している写真。

2日目

 

2日目は聞こえない人、聞こえにくい人を中心としたプログラムでした。
今回は声で話した言葉が文字として画面に表示される「YYProbe(リアルタイム音声認識アプリ)」をメインで使用するほか、アプリが使えない状況では、筆談なども用いてコミュニケーションをとりました。

 

美術館エントランスでグループが輪になって話している写真。画面にはエントランスの高くて白いドーム型の天井が上まで写されている。

2日目は、グループに分かれて鑑賞タイムの開始後、展示室に入る前のエントランスで、美術館の建築について思ったことや考えたことを話し合いました。話題になったのは、エントランスの白くて高い天井です。参加者みんなで上を見上げてドーム型の天井をじっくりとみたあと、参加者それぞれが感じたことを語りました。建物のつくりそのものから美術館という場所の雰囲気を感じとれる要素があることや、何回も来たことがあってもここで立ち止まってじっくりしゃべることも出来るのだというおどろきの声がありました。
また、展示室では、道南地域で活動している出品作家の方とたまたまお会いすることができ、展示の最後にお話を聞くことができました。函館の街をモチーフに、想像の世界の風景が描かれたという色鮮やかな絵について、参加者からは、たくさんの種類の車が長い列になっていることが気になると言う感想がでて、リアルさと想像が混ざりあった不思議なバランスの魅力を共有しました。

展示室から戻ったあとのお茶の時間では、各自で展示全体についての感想を共有しました。

・普段、美術鑑賞は全くしないが興味深い作品を見つけることができた。これをきっかけにもっといろいろ見たくなった。


・どの絵を見ても、思いもよらないような発想で感心の連続だった。

などなど…鑑賞した展示作品に新鮮さを感じる声も多く共有されました。
また、2日目の参加者の多くは、展示にはすでに何回も足を運んでいるとのことでしたが、この日初めて直接作家の方の話を聞くことができてラッキーだったことも印象深いとのことでした。

 

手話通訳を含めた9名がテーブルを囲んでお茶やジュースを飲みながら展覧会の感想について話している写真。デバイスや筆談を使いながらコミュニケーションを取っている。

おわりに

 

2日間のプログラムを通して、障害のある人もない人も、その地域にある美術館にいくことからはじまるさまざまなつながりの可能性をみることができました。
今回の実践プログラムでは、美術に詳しい・詳しくない関係なく、足を運んだ人それぞれが美術館という場所の可能性を開き、展覧会で作品を鑑賞することはもちろん、それ以外の美術館のいろいろな方法の楽しみ方・過ごし方の発見につながったのではないかと思います。

執筆:稲邉夏実(みんなでミュージアム事務局)
写真:みんなでミュージアム

■展覧会概要
つくる冒険 日本のアール・ブリュット45人―たとえば、「も」を何百回と書く。
会期:2025年7月12日(土)〜9月7日(日)
会場:北海道立函館美術館 特別展示室
主催:北海道立函館美術館、一般財団法人 日本財団DIVERSITY IN THE ARTS

■プログラム概要
アクセス・アート・プログラム①②「美術館へおでかけ! ともにみる冒険」
日程: 8月24日(日)、8月26日(火)
情報保障支援:手話通訳、文字通訳