ロゴマーク:みんミ みんなでミュージアム

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目次:活動の記録

みんミの“わ”第14回 感覚にやさしい「センサリーフレンドリー」な空間づくり

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  • みんミの“わ”
  • 報告レポート

2026.03.24(火)

「みんミの“わ”」は、みんミが年に数回継続して開催しているオンラインプログラムです。さまざまな立場や地域の人がオンライン上に集い、ミュージアムアクセスに関する情報を得たり、参加者同士で交流したりしながら学び合う場を目指しています。

通算14回目となる今回は、株式会社乃村工藝社 未来創造研究所 R&D インクルージョン&アート所属の松本麻里さん、デザイナーの堀越さやかさんをゲストに迎え、同社のインクルーシブ部署の取り組みや、多様な施設におけるセンサリーフレンドリーの実践事例をご紹介いただきました。

みんミ“わ”第14回「感覚にやさしい「センサリーフレンドリー」な空間づくり」のバナー画像。みんミのイラストと一緒にタイトルと日時、参加方法についてが掲載されている。

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感覚にやさしい「センサリーフレンドリー」な空間づくり
2025年12月17日(水)19:00~21:00 オンライン(Zoom)開催
申込者数:56名
〈情報保障支援〉
手話通訳:丸山垂穂、村山はるか
文字通訳:チームW・研修センター
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センサリーフレンドリーとは?
感覚刺激に敏感な人が安心して過ごせるよう、光、音、においなどの五感への負荷を調整し、必要に応じて環境を工夫する取り組みで、特に、発達障害や感覚過敏のある人が訪れる先で安心して過ごせるように配慮した空間づくりやツール、情報提供の方法を指します。具体的には、刺激が強い場所で不安や不快感を感じた際に一時的に落ち着けるカームダウン/クールダウンスペースの設置や、ライブ・映画・スポーツ観戦などで、においや光、音の刺激を調整し、周囲からのストレスを気にせず楽しめる専用観覧エリアの整備などが含まれます。

プログラムの流れ
まず松本さんより、所属する未来創造研究所で、プロジェクトがどのような理念で進められているのか、企業におけるセンサリーフレンドリーを担当する部署の位置づけ、構成要素の整理、そしてニーズ調査の結果についてお話しいただきました。
続いて堀越さんからは、感覚過敏の特性をもつお子さんの保護者としての視点を交えながら、具体的なプロジェクト事例や当事者との協働プロセスをご紹介いただきました。
これらを踏まえて、最後に、松本さんからいくつかのケーススタディについても触れていただきました。

開催中のスクリーンショット画像。画面右側にみんミスタッフ、文字通訳、手話通訳が写っており、画面左側にスライドが写っている。

開催中のスクリーンショット画像。みんミ事務局がゲストの松本さんと堀越さんを紹介している。

ミュージアムにおけるセンサリーフレンドリー
感覚過敏のある人がどのような場面で困難を感じるのか、またどのような特性があるのか、今回、話題提供者であるお二人のプロジェクト紹介を通して、改めて具体的に知るきっかけとなりました。それぞれの症状によってニーズが異なるなかでデザインする複雑さに触れるとともに、それらの実践を実現して広めていくことの重要性を感じました。

その中でも、不快感・ストレスを覚える環境において別の刺激によって落ち着くことができる設備やツールの導入から見えてくる、個々のニーズに寄り添うための工夫が印象的でした。場所がひらかれると同時に、その場所がより良い体験ができる場所となりうるプロセスの詳細と可能性を知ることが出来ました。特に、堀越さんから紹介いただいた、お子さんと一緒にスタジアムにセンサリールームを設置したサッカー観戦に参加した際、お子さんから、配慮された空間で過ごせるということに対して「自分は感覚過敏だけど、いやなことだけじゃないね」と言っていたというエピソードは重要な示唆があったように感じました。

公共空間にニーズに合う場所があれば、そこが新たな“居心地の良い場所”となり得るということと、ミュージアムなどの鑑賞体験におけるアクセシビリティの考え方についても非常に参考になることだと思いました。事例紹介で最後に堀越さんが語った「情報が整理されていて静か、行けば好きなものがあるという“なじみ深さ”がミュージアムにはある」という視点、「ミュージアムは町の中でセンサリールームなのでは、日々の困りごとがあるひとにとって新たな居場所として機能しうるのではないか」という言葉も印象的でした。アクセシビリティを考えるうえで⼀方通行ではない開発が重要であるという考え方は、みんミの活動姿勢とも重なりますが、より多様な意味で人々がミュージアムに関わる考え方のヒントとして、大きな手がかりのひとつになると感じました。

参加者とのQ&Aセッション
プログラムの後半には、参加者同士で意見を交換し合い、コメントを共有する時間を設けました。また、話題提供者である乃村工藝社のお二人への質疑応答では、さまざまな立場から参加された方々から、実践に関する具体的な質問や、今後のコラボレーションにつながる提案など、様々な感想や質問が寄せられました。

質疑応答であったQ&Aについて一部抜粋してご紹介します。

● 質問
カームダウンスペースを導入する際、感覚過敏ではない人が利用してしまうことについて、どのように考えればよいでしょうか。

● 回答(松本さん)
オリンピックの際に作られた JAS規格のピクトグラムがあり、それを掲示することで、ある程度利用者を限定する効果はあります。ただ、現時点では定義づけがまだ曖昧な部分も多いため、「感覚過敏のある人に限定するのか」「誰でも休めるスペースとして開くのか」といった方向性をどう設定するかが重要になります。
むしろその選択こそが、施設としての思想や姿勢を示す機会にもなり得ると考えています。

● 質問
センサリーフレンドリーバッグ(ハンドスピナーやスクイーズボールなど、心地よい刺激を得られるアイテムが入ったバッグ)の中身は、どのように扱っていますか。

● 回答(堀越さん)
特に決まったルールはありません。アイテムを持ち帰ってよい場合もあれば、センサリールーム内だけで使うものとして運用している場合もあります。施設の状況や目的に応じて、柔軟に使い分けています。

 

おわりに
ミュージアムをはじめとした日常の施設において、外出のハードルを下げ、安心して楽しめるようになる環境づくりのデザインや工夫の端々から多くの学びを得ました。
まだ取組が始まったばかりの施設も多い中で、各施設の状況に合わせて本日紹介した取り組みは少しずつ進んでいます。これから活動をより広げていくためにも、このような実践事例を知る機会は重要です。ミュージアム体験を支える公共空間の可能性について、理解を深めながらできることを積み重ねていきたいと思います。

レポート:稲邉夏実(みんなミュージアム事務局)