ロゴマーク:みんミ みんなでミュージアム

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目次:活動の記録

みんミ報告レポート/埼玉県博物館連絡協議会南部地域研修会実施協力

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  • 報告レポート

2026.03.24(火)

埼玉県博物館連絡協議会南部地域連絡協議会からの依頼を受け、2025年11月、埼玉県立近代美術館にて開催された、博物館職員が、視覚障害のある人、聴覚障害のある人への対応について学ぶ研修の実施に協力しました。研修には、南部地域のミュージアムに所属する学芸員が中心となって参加しました。

絵画の前に5から6人の研修参加者が集まって鑑賞をしている様子の写真。

会場の埼玉県立近代美術館のコレクションを鑑賞するプログラムを実施。

研修会では、ミュージアム・アクセス・コーディネーター(以下、当事者コーディネーター)と埼玉県在住の当事者協力者をゲストに招いた鑑賞体験プログラムを実施するとともに、さいたま市立漫画会館と埼玉県立近代美術館の2館が、これまでに積み重ねてきた取り組みを紹介しました。当事者コーディネーターの方々との対話や鑑賞を通じて、視覚障害のある人、聴覚障害のある人が美術館を訪れる際の具体的なイメージを共有し、現場での対応につなげる機会となりました。

会場の後方の机にホワイトボードが机に立てかけてある写真。タイムスケジュールが手書きで書かれている。

研修の時程を書いたホワイトボード。

前半のプログラムでは、研修参加者が4つのグループに分かれ、視覚障害のある人、聴覚障害のある人とともに、埼玉県立近代美術館の絵画作品やデザイン椅子を鑑賞しました。

絵画の前を研修参加者が集まって対話しながら鑑賞をしている様子の写真。当事者の協力者のなかには盲導犬を連れた人が参加している。

コレクション展の絵画作品を研修参加者と視覚に障害のあるゲストが鑑賞している。ゲストと参加者がともに一つの作品を囲み、対話しながら作品を鑑賞した。

絵画作品の鑑賞では、聴覚障害のある人が参加したグループで、鑑賞の際に 「作品を見る時間」と「話す時間」を分ける、同時に見ることと聞くこと(手話を読んだり文字表示を読んだりすること)ができないため指差しをしながら話さないといった、コミュニケーション上で必要となる前提などが共有されました。
鑑賞していくうち、絵画に描かれた牛と人物の表情豊かな動きに注目が集まり、「この動きにはどんな背景があるんだろう?」という話題に発展しました。絵の前で実際に体を動かしながら、牛の気持ちや人物の動きを想像して語り合うなど、にぎやかな対話が生まれました。

 

研修会の会場に並べられた色とりどりで様々な形のデザイン椅子に参加者が腰を掛け、座り心地を確かめながら対話している様子の写真。

聴覚に障害のあるゲストと参加者がデザイン椅子を鑑賞している様子の写真。

デザイン椅子の鑑賞では、実際に座ったり触れたりしながら、個性豊かな椅子の名前をみんなで考案してつけていくワークショップを行いました。
聴覚障害のある当事者コーディネーターからは、この椅子の鑑賞について、実際に触れることで、見るだけでは気づけない会話の広がりを感じたという感想がありました。とりわけ、日常に近い存在である椅子であることが、参加者にとって話しやすい題材となり、対話を生み出す助けになっていたとのことです。

2種の鑑賞体験プログラムを通じて、参加者は、障害のある人とのコミュニケーションの取り方や、鑑賞の方法・見方の違いなど、普段は意識しにくいポイントを体験を通して考える時間になりました。
後半の事例紹介では、さいたま市立漫画会館と埼玉県立近代美術館がこれまで取り組んできた障害のある人と協力した事例や、障害のある人が参加しやすいプログラムの実施事例を紹介しました。

スクリーンを背に登壇者が手話で話している様子の写真。研修参加者は並べられた椅子に座っている。

研修会の最後は、協力いただいた当事者の方それぞれから今回の研修を振り返ってのコメントが共有された。写真は、聴覚に障害のあるコーディネーターが手話で話した時の様子。

ミュージアムが多様な来館者を迎えるために行われた今回の研修を通じて、参加者からは、当事者の方と一緒に鑑賞したことで、普段は気づけない視点や豊かな感覚に触れられたという感想が寄せられました。新しい学びを得て、まずは小さな一歩から取り組んでみたいという前向きな気持ちが生まれたとの声や、また、事例紹介を通して、特別な体制が必要な取り組みだけでなく、ちょっとした工夫でも多様な人が楽しめる場づくりができることを実感したという声もありました。

当事者コーディネーターからは、それぞれの立場から、前向き度の高い意見が寄せられました。
聴覚障害のあるコーディネーターからは、さいたま市立漫画会館の事例紹介で、聞こえない人に対する情報保障は、ただ手話通訳をつければ聞こえない人みんなが楽しめるわけではないこと、聞こえない人の多様性を前提に共有がされていてよかったと述べられていました。また、情報保障の用意は多少の準備が必要だが、大きな負担ではないという紹介がされていたことについて、そのように伝えられていた点が嬉しかったという声もありました。
一方、視覚障害のあるコーディネーターからは、こうした取り組みが進んでいることへの感謝とともに、より気軽にミュージアムを楽しめる環境への期待が寄せられました。特に、事前連絡が必要な状況が依然として多い現状に触れ、思い立ったときに訪れやすい場が増えていくことを望む意見がありました。

当事者とともに考え、対話しながら鑑賞する体験から得られる気づきは、どのミュージアムでも活かせる可能性を持っています。みんミでは今後も、より多様なかたちでミュージアム体験を楽しめる環境づくりに取り組んでいきたいと考えています。

埼玉県博物館連絡協議会南部地域連絡協議会、今回の研修会の南部地域チーフ館を担当した、さいたま市立博物館の橋本さんから当日の様子をまとめたレポートをいただいたので紹介します。

 

今回の研修は、展示鑑賞における「合理的配慮」に関する取り組みを進めていた、さいたま市立漫画会館と埼玉県立近代美術館のご協力で実現した。また、研修会の運営、当事者の方々とのつなぎ役として「みんなでミュージアム」事業をご紹介いただき、事務局だけでは難しい充実した内容が実現した。当日は加盟各館から22人の現役職員が参加した。多くの参加者は、日頃の業務で来館者への対応や展示の企画運営に携わっており、「合理的配慮」の実現方法を考える立場である。今回の研修では、特に当事者の方とともに鑑賞を行い、知識だけでなく実体験を得ることができた。アンケート結果からは、それまでは「ハードルの高いテーマというイメージが強かった」ものが、「様々な気づきをより具体的に得ることができた」「ちょっとした工夫で様々な立場の人にとって楽しめる事業となる」など、取り組みの手がかりを得ることができたという感想が寄せられており、研修の効果は大きかったと感じている。

参加者アンケートからは、合理的配慮に対して「難しい」「専門的」という印象を持っていた職員が多かった一方で、当事者とともに鑑賞する体験を通じて「具体的な工夫のイメージが持てた」「自館でも取り組める点が見つかった」といった前向きな声が寄せられた。今回の研修で得られた気づきが、各館での展示づくりや来館者対応の改善につながることを期待するとともに、今後も継続的に学び合える場をつくっていきたい。

埼玉県博物館連絡協議会南部地域連絡協議会
南部地域チーフ館 さいたま市立博物館 橋本

 

レポート:稲邉夏実(みんなでミュージアム事務局スタッフ)
写真:みんなでミュージアム事務局