ロゴマーク:みんミ みんなでミュージアム

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目次:活動の記録

【レポート】地域の団体と連携した障害のある人とない人のミュージアム体験

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  • 報告レポート

2025.01.15(水)

「目で感じるミュージアム体験をともに楽しむー聴覚障害のある子どもとその家族、地域の障害のある人が同じ仲間としてー」

10月27日(日)、東京・八王子の街中にある八王子市夢美術館で「かがくいひろしの世界展」を楽しむ企画を開催しました。かがくいさんは特別支援学校の教員でもあり、「だるまさん」シリーズなどを発表した絵本作家です。

本企画の参加者は、みんミに開催の相談をした聴覚障害のある子どもとその家族の支援団体「ほっとりんく」と、八王子で障害のある人とない人の余暇活動をすすめる「かてコト」から声をかけ集まった人たちです。聴覚障害等のある子どもとその家族4組、知的障害、自閉症、精神障害のある人、活動に関心のある人など合計20人が参加しました。

聴覚障害のある子どもたちとその家族のパートナーとして企画・実施した「ほっとりんく」代表で元ろう学校教諭の石川阿(ほとり)さんから、実践の気づきをレポートいただきました。

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ほっとりんくの活動を始めて4年目になりますが、今回初めて「聴覚障害」というカテゴリー以外の方とも一緒に活動をしました。

展覧会を鑑賞する前に実施した絵本の読み聞かせでは、小学生や大人のみなさんにとって退屈な時間になってしまうのではないかという不安がありました。読みはじめは、子どもも大人も静かに見て・聞いているだけでした。しかし、読み手から「一緒に動いていいんだよ!」「次はどうなると思う?」などと投げかけられると、少しずつ反応が出始め、途中からは皆さん思い思いのことを口にしたり体で表現したり、会場に一体感が出てきました。読み方だけではなく、今回は音声、手話、写真、イラスト、文字をコミュニケーション手段として使用し、見てわかる環境を整えられていたと思います。

障害のある大人の参加者で、じっくり手話の読み聞かせを見て、問いかけに反応している人もいて、「席に座って話を聞くことが難しい時もあるのですが、今回は最後まで見ていたので驚きました。」という支援者の声もあるほどでした。

また、鑑賞やワークのサポートとしてボランティアに参加したみんミパートナーからは「ひとつひとつの表情や動きに惹きつけられて、読み聞かせの時の一体感はまるで魔法のような時間でした。」と感想がありました。

手話と声による絵本の読み聞かせの様子

私にとってはいつも通り、聴こえない子たちへの関わりを参加者全員にしたつもりでしたが、初めて見る方からはこのような反応・感想が出てくるのかと驚きました。聴こえない子どもたちのためにいつも行っている方法が、そうではない人たちにもとてもメリットがあるということを実感できました。

今回は、制度上の区分としては聴覚障害だけでなく、さまざまな障害のある人たちの集まりだったかもしれませんが、「視覚的に分かりやすい情報提示の仕方が心地いい人たち」という分け方をすれば同じ仲間だったように思います。

同じ障害種、コミュニケーション手段、別の切り口で、とさまざまな仲間分けを模索していく必要があると同時に、仲間分けをしない空間も時には必要でしょう。「ほっとりんく」は同じ仲間で集まることを目的に運営している団体ですが、今回の開催を通じて「同じ仲間」の切り取り方はその時々で違っていいと思うようになりました。

親子で作品鑑賞タイム

マジョリティの人にとっては「同じ仲間」に囲まれた生活環境が当たり前でも、マイノリティの人にとってはそうではないことが多いでしょう。補聴機器をつけた友達に出会える嬉しさ、手話で話せる安心感などはまだ当たり前になっていない状況だからこそ生まれる気持ちなのだと思います。だからこそ、ほっとりんくのイベントに参加した時はどんな自分でも受け入れてもらえる、周りがそれを当たり前だと思っているという環境を作りたいと思っています。

その一方、特性がバラバラな子どもたちが集まっても、活動を通して通じ合うことが少しずつできるようになっている様子を見ています。大人から見たら「どうしてあの子とこの子が通じ合っているんだ?」となることはよくあります。子どもたちは柔軟で、友達として関わるときに「この子は◯◯障害だから」「こんな特性があるから」という切り口からは入りません。あくまで、1人の「仲間」として接している気がします。今回でいえば、「この企画に参加した人」という「同じ仲間」だったのではないかと振り返りました。

今後は1つの切り口として、例えば、声の大きさの調整が難しい、大きな声で話を聞く必要がある、突然声が出てしまうというような方のための美術館鑑賞、「大きな声で話しても大丈夫な日」の設定も面白いかもしれません。

作品鑑賞後の創作タイム

執筆・編集:平澤咲(みんなでミュージアムプロジェクトメンバー)

レポート:石川阿(「ほっとりんく」代表

協力:ほっとりんく、かてコト

写真:ほっとりんく、かてコト