【レポート】第12回オンラインプログラム「みんミの“わ”」
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2025.02.27(木)
みんなでミュージアム(以下:みんミ)が行うオンラインプログラム「みんミの“わ”」は、さまざまな立場や地域の人がオンライン上に集い、ミュージアムアクセスに関する学びと交流の場を目指して継続的に開催しているプログラムです。
第12回では、みんなでミュージアムが今まで取り上げてこなかった、日本語を母語としない人や文字の読み書きが苦手な人に向けた美術館での「やさしい日本語」の活用事例について取り上げました。
今回は、ミュージアムでの「やさしい日本語」の推進に取り組んでいる合同会社マーブルワークショップ代表、國學院大学兼任講師の高尾戸美(たかお・ひろみ)さん、「やさしい日本語」によるワークショップを実施している東京都庭園美術館 学芸員の大谷郁(おおたに・いく)さんをゲストにお招きし、「やさしい日本語」がなぜ必要なのか、そもそもどういうものなのか、ミュージアムでの活用事例とともに学びました。
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「やさしい日本語」がミュージアムとつながるきっかけに〜ミュージアムの実践事例から考える〜
2024年12月11日(水)19:00~21:00 オンライン(zoom)開催
申込者数:74名
〈情報保障支援〉
手話通訳:村山春佳、脇水彩
文字通訳:チームW・研修センター
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- 話題提供 博物館を取り巻く環境と「やさしい日本語」について
合同会社マーブルワークショップ代表、國學院大学兼任講師 高尾戸美さん - 話題提供 美術館で実施している「やさしい日本語」を取り入れたプログラムの事例紹介
東京都庭園美術館 学芸員 大谷郁さん - ブレイクアウトルームでのグループワーク
では、詳細について、以下ご紹介します。
1.話題提供 博物館を取り巻く環境と「やさしい日本語」について
高尾戸美さんは、合同会社マーブルワークショップというミュージアムの支援をする会社を経営しながら、大学講師、大学院生をしている方で、これまでに3つのミュージアムで働かれました。その勤務先の一つ、多摩六都科学館で「やさしい日本語」に出会い、現在は「やさしい日本語」の調査、ワークショップなどでの実践、普及活動としての研修を行っています。
<博物館を取り巻く環境>
まず、博物館を取り巻く環境について、世界的な博物館の組織ICOM(国際博物館会議)による「博物館定義」の改訂(2022.8 プラハ大会)についてのお話がありました。
2022年8月のプラハ大会で新しく博物館の定義が追加され、「誰もが利用でき、包摂的であって、多様性と持続可能性を育む」「コミュニティの参加とともに博物館は、活動する」という部分に着目しているといいます。
次に、国内の博物館法の改正のお話があり、2022年に博物館法が改正され、合わせて博物館法施工規則も変わったそうです。この参酌基準の中に、「高齢者、障害者、妊娠中の者、日本語を理解できない者、その他博物館の利用に困難を有するものが博物館を円滑に利用することの配慮がなされていること」という文言があり、ここに「日本語を理解できない者」という文言が追加されています。これらは在住外国人のことも含んでいると考えられると高尾さんから説明がありました。
<国内における在住外国人の増加>
日本で暮らす外国人の数は、約340万人(2023年末)で前年度比約10.9%増加しており、これからもどんどん外国人が増えていくと考えられるそうです。
増えていく外国人への対応として、行政は「多文化共生」を進めようとしており、「多文化共生」は、「国籍や民族などの異なる人々が、互いの文化的違いを認め合い対等な関係を築こうとしながら、地域社会の構成員としてともに生きていくこと」と定義され、この定義は国籍に限らず、様々な文化を持つ人たちにも適応されると考えたら良い、との投げかけがありました。
<「やさしい日本語」とは>
「やさしい日本語」は、外国の人などでもわかるように配慮して簡単にした日本語のことで、日本語を勉強中の人でもわかりやすいものになっています。「やさしい」の意味には、意味が「易しい」と人に「優しい」という2つの意味があり、1995年の阪神・淡路大震災のときに、多くの外国人が被害を受けたことを契機に誕生した背景があります。
高尾さんは「やさしい日本語」を勉強するにあたり、私たちが知っておくべき日本に住む外国人の困りごとの背景にある3つの壁について言及されました。
1つ目が「法律制度の壁」、2つ目が「ことばの壁」、3つ目が「こころの壁」です。
「やさしい日本語」が解決できることは、2つ目の「ことばの壁」が大きいが、他の2つの壁も十分寄与する可能性があるそうです。また、日本に住む外国人は何語を話すのかについて、私たちは英語がグローバルランゲージと考えがちですが、英語は世界の人口の2割程度だけが使う言葉だそうです。日本に住む外国人は、日本語を話したり、日本語を勉強している人も多くいます。また、「やさしい日本語」について知っている人が多く、「やさしい日本語」での情報発信を望んでいるが、逆に日本人は「やさしい日本語」について全く知らない人が多いといいます。
2.話題提供 美術館で実施している「やさしい日本語」を取り入れたプログラムの事例紹介
大谷郁さんは、東京都美術館と東京藝術大学がすすめる、美術館を拠点にアートを介してコミュニティを育むソーシャルデザインプロジェクト「とびらプロジェクト」にコーディネータとして関わった後、現在は、東京都庭園美術館で教育普及担当の学芸員として勤務されています。今回は、東京都庭園美術館で実施している「やさしい日本語」を取り入れたプログラムの事例を共有いただきました。
<東京都庭園美術館について>
東京都庭園美術館は、1933年に皇族の邸宅として建てられ、1983年に美術館として開館し、2015年に国の重要文化財になりました。あらゆる鑑賞者に開かれた美術館になることを目指し、さまざまな取り組みを行っており、その中に、外国人に向けたプログラムもあります。東京都庭園美術館がある港区は、外国人がたくさん住んでいて、大使館も多く、約130の国籍の人が住んでいる地域だそうです。
<東京都庭園美術館での「やさしい日本語」を取り入れたプログラムの紹介>
大谷さんは、日本語を母語としない外国人・外国ルーツの人々について、街の中ではよく見かけるけど、美術館には来てもらえているか疑問に思ったといいます。どうしたら、外国人・外国ルーツの人々が美術館に来てもらえるか考えたときに、実際に知り合いになり、つながりを持つために、港区国際交流協会を4年前に訪問しました。
そして2021年に港区国際交流協会の「みなとにほんご友だちの会」のメンバーを対象に、オンラインでの「やさしい日本語で美術館を楽しむプログラム 生活の中の文様を見つけよう」というプログラムを実施しました。まずは、東京都庭園美術館は地域にある美術館で、すぐに行ける場所だということを知ってもらおうと思ったといいます。このときに美術館の職員が「やさしい日本語」で館内を説明し、日本語の字幕をつけた案内動画を作成したそうです。
2023年には、「わたしの椅子を作ろう」というテーマでプログラムを行いました。対象は小学校3〜6年の外国にルーツのある子どもと日本の子どもです。プログラムの企画段階からワークショップを企画したアーティストと日本語教師にも協力してもらい、チラシの文言や、アーティストから子どもたちへの語りがけ言葉のアドバイスなど、当日まで伴走してもらい実施したそうです。このときに集まった子どもは、インターナショナルスクールに通う子も多く、日本語より英語が得意な子、一方で日本語しかわからない子も混ざっていました。そのため「やさしい日本語」で語りかけつつ、日本語がわからなそうな反応があった子どもには、逆に英語での声かけや、図を指で差し示すなど、さまざまな方法を駆使しながらプログラムを進行していたというエピソードも教えていただきました。
2024年は、東京都庭園美術館の建物そのものをテーマに「どんな家で遊びたい?」を行いました。このときは、前年に参加した子どもが、再び参加してくれて嬉しいつながりが生まれたそうです。
また、東京都庭園美術館では、防災訓練でも「やさしい日本語」を取り入れ、誘導の際に、日本語がわからない人や視覚的に情報をキャッチする人に向けたフリップの作成や災害時の館内放送を「やさしい日本語」に変更しました。現在では、「やさしい日本語ガイド」の準備を高尾さんと一緒に行っているそうです。
3.ブレイクアウトルームでのグループワーク
ここからは、実際に東京都庭園美術館のウェブサイトで使われている文章を例題として「やさしい日本語」を考えるワークを行いました。参加者3人~4人がブレイクアウトルームに分かれて取り組みました。
最後にゲストのお二人から、例題を「やさしい日本語」化した文言の共有や「やさしい日本語」とソーシャルストーリーで使う文言の違いの説明があり、最後に質疑応答や参加者に向けたコメントをいただき、終了しました。
高尾さん「『やさしい日本語』に変換するプロセスは、元の文章が難しいという認識に基づいて、やさしい日本語化(略してやさ日化)を行います。人によって、若干の表現の違いが出てくるものを再検討していく作業です。一人で考えるよりも誰かと一緒にやったほうが、より良くなる可能性が高いのが、やさ日(※やさしい日本語を略した言葉)化のプロセスではないかと思います。」
大谷さん「『やさしい日本語』は、ミュージアムと来場者をつなぐ架け橋や入口になると思います。美術館の解説は難しい言葉で書かれていることも多くあります。情報を詳しく伝えることも大切なことですが、それだけでは「理解できない」「自分とは関係無い」と思ってしまう人もいるのではないでしょうか。実は、最初の入口をどのように優しくするかがとても大事だと思います。」
来年度も、オンラインプログラム『みんミの“わ”』は、活動を共有する機会として継続して開催していく予定です。みんミの活動に興味を持った方はぜひ、お気軽にご連絡ください。
お問い合わせ:
https://minmi.ableart.org/contact/
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高尾さんによる「やさしい日本語」のポイント
- 文章は短く、一文で一情報を提供
- はっきりとできる、できないを言う
- 文末は「です」「ます」だけを使う
- 敬語は使わない
- 受け身「〜られる」を使わない
- 漢語、カタカナ語、略語、方言、オノマトペは使わない
- 書き言葉は、「分かち書き」「総ルビ」にする
- イラスト、写真を併用するのも良い
- 話し言葉は、ゆっくり、はっきりと言う
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参考URL
リーディングチュウ太
https://chuta.cegloc.tsukuba.ac.jp/
リーディングチェッカー
https://tetote.cegloc.tsukuba.ac.jp/
多摩六都科学館 やさしい日本語ページ
https://www.tamarokuto.or.jp/easy_japanese/
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執筆:渡邊遥(みんなでミュージアム事務局)