ロゴマーク:みんミ みんなでミュージアム

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目次:活動の記録

【レポート】第3回オンラインプログラム「みんミの“わ”」

  • みんミの“わ”
  • 報告レポート

2022.11.01(火)

みんなでミュージアム(愛称:みんミ)は、活動を通してこれまでになかった繋がりを広げ、集まった人々とともに学び合いながら、仕組みや方法を考えていくプロジェクトです。
毎回テーマを設け、定期的に開催しているオンラインプログラム「みんミの”わ”」は、みんなでつくる学びの場です。参加者の皆さんと一緒に対話をすることで、お互いの学びに繋がることを目指しています。

第3回目は「コミュニケーション」をテーマに開催しました。
今年9月に開催された六本木アートナイト2022では、みんミの事務局を務めるNPO法人エイブル・アート・ジャパンが、「見えない人」と「聞こえない人」がともにファシリテーターとなるインクルーシブ・アート・プログラムを企画し、実施しました。

【参考】
六本木アートナイト2022 公式サイト:
https://www.roppongiartnight.com/2022/

インクルーシブ・アート・プログラム 詳細ページ:
https://www.roppongiartnight.com/2022/programs/15078

プログラムの報告記事:
①オンライン鑑賞会:「みんなdeおしゃべり鑑賞会‐六本木アートナイト‐」https://www.facebook.com/…/pfbid0pFz2U2vsoKaccQQeV3EWy4…

②鑑賞ツアー:「鑑賞ツアーde大冒険!‐六本木アートナイト‐」https://www.facebook.com/ableartjapan/posts/pfbid021WqmSM6Vkir6Yirm854fvTUx1W2zv8kGQ53wnj5e7q233S4qUtxoWGDredaXcykKl

今回は、六本木アートナイト2022の事例から、オンライン鑑賞会でファシリテーターを務めた西岡克浩さんと山川秀樹さんをゲストにお招きし、お二人の視点からコミュニケーションについてお話しいただきました。

第3回『多様な人とつながる~インクルーシブプログラムでのコミュニケーションの事例から~』
ゲスト:
西岡克浩さん(聞こえないファシリテーター、美術と手話プロジェクト代表)
山川秀樹さん(見えないファシリテーター、対話鑑賞ナビゲーター)
2022年10月8日(土)14:00~16:00 オンライン(Zoom)開催
参加者:23名
<情報保障>手話通訳:丸山垂穂、村山春佳  文字通訳:チームW・研修センター


まず、プログラムの冒頭では、オンライン鑑賞会を担当したみんミ事務局の平澤さんから、企画や運営を進めていくなかで見えてきたことを、企画側の目線から紹介しました。

インクルーシブ・アート・プログラムは、障害のある人の「ために」ではなく、障害のある人やさまざまな人と「ともに」活動することを目指した企画です。これまで、見えない人と聞こえない人、それぞれがファシリテーターとなる企画を行ったことはありますが、見えない人と聞こえない人がともにファシリテーターとなり、ともに対話型鑑賞を楽しむプログラムに取り組むのは今回が初めての試みでした。平澤さんからは、見えない人と聞こえない人とともにプログラムを運営する上での体制や特徴、さまざまな参加者と鑑賞を楽しむために、工夫したポイントの共有がありました。
例えば、発言をする人は手を挙げて、名前を言ってから話し始めることで、会話のテンポが合わせられること。オンラインプログラムとして手話通訳者を交えた進行をする際に、Zoomのスポットライト機能を使って、手話通訳者と発言する人の画面を固定することで、手話を必要とする人に常に必要な情報が得られる環境をつくること。ファシリテーターと参加者のあいだを繋ぎ、必要な視覚情報や音声情報を伝えて鑑賞の場を支えるパートナーの存在のこと。
このようなコミュニケーションの工夫から、参加者が発言しやすい環境をつくり、より作品鑑賞を深められることを目指しました。これらは今回のプロセスのなかで見えてきた点ですが、場の目的や集まる人など、シチュエーションによって常に変化していくものだと思います。

平澤さんのお話しの後は、ファシリテーターを務めた西岡克浩さんと山川秀樹さんに、プログラムを通して感じたこと、今回の経験から見えてきた成果や、これから挑戦していきたいことなどをお聞きしました。

山川さんからは、準備を進めていく段階では、見えない人と聞こえない人がオンライン上で集うプログラムとして、作品鑑賞が成り立つか不安に感じていたこと。当日は全国から集まった参加者から好意的な反応がみられ、結果として新たな対話型鑑賞が成立できたことが述べられました。また、見えない人と見える人の対話型鑑賞では、視覚的要素を言葉で積み上げていく往復のやりとりから鑑賞を深めていくのに対して、聞こえない人と聞こえる人のあいだでは視覚的に鑑賞が成立しているという大きな違いがあること。こうした、ものとの対峙の仕方や、認知の仕方が全く異なる状況で鑑賞をともにすることの難しさや、その一方で、こうした違いから新たな鑑賞の可能性を見出せる両面を感じられたことをお話しいただきました。

西岡さんからは、そもそもお互いに日常生活のなかでの工夫に多くの違いがあるなかで、聞こえない人と見えない人がともに鑑賞に向き合うのはおもしろそうだという第一印象を持ったこと。また、実際にプログラムを組み立てていくなかで、聞こえない人と見えない人の会話のスピードには大きな違いがあり、対話についていけないことへの不安を感じたこと。会話のテンポの違いをどのように解消できるか話し合うなかで、お互いのズレはコミュニケーションを重ねることで減らしていくことができると気づいたこと。向き合うことを続けることでお互いを少しずつ理解していく。コミュニケーションを重ねていくプロセスを諦めない姿勢が、今回のプログラムに反映されたのではという視点を話していただきました。

異なる言語体系や文化に出会い、新たなコミュニケーションを試みるときに必要なエネルギーは大きなものだと痛感します。お二人の話しを聞くことで、自分と相手の違いに無関心になるのではなく、相手のことを分からないという前提に立って、相手を知るために何ができるか向き合い続けること。こうしたやり取りの積み重ねから可能性が拡がることを感じました。
今後、挑戦してみたいことに対して、西岡さんからは、見えない人と聞こえない人のそれぞれの個性や得意なことを活かした企画として、音のある作品を言葉や手話で楽しむ鑑賞方法の提案がありました。山川さんからは、特別な対象者のためにつくられた企画ではなく、その場に集まった人が軽やかに楽しめる企画がもっと増えることが理想だというお話しや、多様な人が全国から集う場としてオンラインでの取り組みが定着しているなかで、今後も継続して工夫を更新していくことが大切だとコメントをいただきました。
西岡さんと山川さんの対談のあとは、参加いただいた方々と小さなグループに分かれて、対話をする時間を設けました。
「みんミの”わ”」は、これまでに3回のプログラムを開催してきましたが、参加者のなかには芸術文化や福祉関係者、障害のある方、中間支援組織のスタッフなど、背景や年代もさまざまな方がいます。プログラムでは、誰もが同じ条件で発言ができるように、チャットのコメント欄から参加する時間、全体からより小さな輪に分かれて対話する時間、参加者全員で対話する時間を分けて設けています。

参加いただいた方からの声には、共感だけが目的ではないコミュニケーションの捉え方や、聞こえる・聞こえない、見える・見えないといった特性よりも、もっと一人ひとりの感覚に焦点を当てて、個々人それぞれが持っている感覚の違いと丁寧に向き合っていくことが大切なのではないかという視点。しなければいけないといった福祉的な向き合い方ではなくて、対等に同じ場を楽しむことの大切さ。〇〇だ「から」ではなく、「こそ」できる方法を一緒に発見し、お互いに学びながら楽しむ場をつくれるのではないか、といった意見や対話が繰り広げられました。

「コミュニケーション」というと大きなテーマですが、今回ご参加いただいた皆さんが、この場を通して何かを感じ、普段の日常生活のなかでコミュニケーションを意識するきっかけになっていただけたら良いなと思います。

第4回は11月26日(土)14:00~16:00です。ご参加をお待ちしています。

レポート:今野優紀(みんなでミュージアム プロジェクトメンバー/エイブル・アート・ジャパン)