ロゴマーク:みんミ みんなでミュージアム

ロゴマーク:みんミ みんなでミュージアム

ロゴマーク:みんミ みんなでミュージアム

ロゴマーク:みんミ みんなでミュージアム

目次:活動の記録

【レポート】第6回 オンラインプログラム「みんミの“わ”」

  • みんミの“わ”
  • 報告レポート

2024.02.16(金)

第6回(2023年度第1回)の「みんミの“わ”」では、2022年度の活動から見えてきた課題から、みんミの活動を主体的につくっていく「ミュージアム・アクセス・パートナー(以下、パートナー)」と「ミュージアム・アクセス・コーディネーター(以下、コーディネーター)」の活動紹介と募集案内を行いました。

みんミの活動に関わってみたい人、パートナーやコーディネーターとして活動することに興味のある人、みんミを初めて知る人を対象に開催。活動紹介の時間では、パートナーやコーディネーターとして、2022年度に初めて実践に取り組んだ二人をゲストに迎え、実践を振り返りながら活動を詳しく紹介しました。

みんミのわ第6回の告知画像

【みんミの“わ” 第6回】みんミの活動登録スタート!〜みんミで活動する「パートナー」「コーディネーター」の活動紹介と募集案内

ゲスト:
吉川 美樹さん(2022年度/パートナー実践者)
佐々木 奈央さん(2022年度/視覚障害当事者コーディネーター実践者)

日時:2023年7月29日(土)14:00~16:00 オンライン(Zoom)開催
申込数:42名

<情報保障>
手話通訳:村山はるか、和田みさ
文字通訳:チームW・研修センター

<当日の流れ>
・みんなでミュージアムとは
・「パートナー」の活動紹介とゲストトーク
・「コーディネーター」の活動紹介とゲストトーク
・ブレイクアウトルームでの質疑応答
・全体共有セッション
・登録案内(登録手順・条件)
・質疑応答

パートナーの活動内容
パートナーの活動紹介を記載したスライド資料

まずはじめに、みんミ事務局の平澤より、みんミの紹介と「パートナー」の活動紹介がありました。
以下はパートナーについての紹介の概要です。

<パートナーとは?>
・ミュージアムに行きたい人に伴走する人
・障害のある人に伴走しながらミュージアム体験をつくる人

<パートナーの活動>
・障害のある人や支援団体の希望に沿った鑑賞方法の提案や実施
・安心してミュージアムに出かけるために必要なことのヒアリング、会場下見や利用案内

<活動紹介>
・体制:鑑賞者(知的障害・自閉症)、ヘルパー(当事者の外出や宿泊のサポート)、パートナー、みんミ事務局スタッフ
・概要:国立科学博物館にて常設展と企画展「毒展」を鑑賞
・事前準備:訪問する展覧会の提案とプロフィール交換
・活動当日:昼食、鑑賞のサポート(混んでいない場所への案内、見どころの案内、作品を見て気づいたことの共有など)、ミュージアムショップ訪問
・参考レポート:https://minmi.ableart.org/activity/activity_partner202302/2023/

2022年度に「パートナー」として実践に取り組んだ吉川さんにお話を伺う様子。

続いて、2022年度に「パートナー」として実践に取り組んだ吉川さんにお話を伺いました。

吉川さんは、もともと美術館が好きで高校生のころからよく足を運んで鑑賞を楽しんでいたとのこと。自身が好きなミュージアムという場所で、何かできることはないかと考えていたところ、「パートナーをやってみませんか?」とみんミ事務局から誘われたことをきっかけに、活動を始めました。

吉川さんは活動への興味や動機を以下のように、お話ししてくださいました。

<興味>
・「とびらプロジェクト」のとびラー活動で、アートコミュニケーターとして活動した経験から「誰かと一緒に鑑賞することは楽しい!」と感じた。
・障害のある人とともに活動したり、発達障害のある子どものためのワークショップを企画したとき、ミュージアムへのアクセスにハードルがある現状を学んだ経験を活かしたい。
・勉強している手話をどこかで役立てたい。

<動機>
・障害への知識や実践経験がなく正直不安もあったが、まずは「楽しそう」、「おもしろそう」という第一印象から「やってみよう!」という気持ちにつながった。
・自分以外の人が、作品を「どんなふうに見るのか」「どんなふうに感じるのか」興味があった。

その上で、実際にパートナーの活動を経験した印象として、終わったときに「意外とスムーズに終えられた。」と感じたことを振り返ります。その背景には、鑑賞者が日頃からご家族とミュージアムによく足を運んでいること。ヘルパーさんやみんミ事務局のスタッフが、鑑賞者とすでに面識があったことが大きかったのではと話します。最初はどのように鑑賞をともにすればよいか分からず、戸惑う気持ちもあったそうですが、このような状況のなかで、ご本人を含め安心して活動ができたことが良かった、とコメントされました。

また、ひとりで鑑賞するときとは違う体験ができて興味深かったこと、いつか同じ方と違う展示を見に行きたい、とも語られました。

パートナーから手渡された、ルノアールの絵葉書に書かれたメッセージを読む鑑賞者の様子。

撮影:大島 彩

続いて、活動にあたって工夫したことを以下のように聞かせていただきました。
・事前にお互いのプロフィールを交換したときに、画家のルノアールが好きだということを知ったので、自宅にあったルノアールの絵葉書にメッセージを書いてお渡しした。

・鑑賞をはじめる前に、お昼ごはんを一緒に食べるところからはじめた。となりに座って食事をとることで、自分のなかの緊張や不安な気持ちを解くきっかけになった。

・鑑賞者の方は自分の見たい作品をどんどん見に行くタイプだった。同じ展示室のなかで、たまたま見たい作品が重なり、同じ作品を鑑賞しながら意見交換する場面があった。自然な流れでコミュニケーションが取れたのが良かった。

・常設展を見ているとき、鑑賞者の方から「頭の中がいっぱいいっぱいになってきて、ちょっと大変」と伝えられた。展示室から離れたほうがよいと判断し、屋上の休憩スペースに移動した。疲れや辛さを伝えてもらえたことが嬉しかったと同時に、お互いに無理をしない・させないことが大切だと気づいた。

展示ケースから作品を見ている人と、ともに鑑賞をするパートナーの様子

撮影:大島 彩

吉川さんからは、パートナーとして活動する上で、ご自身が大切だと考えるポイントや、こんな人に向いているのではないか、という視点をいくつか挙げてくださいました。

・展示の内容だけではなく、ミュージアムの空間そのものを楽しめること。ミュージアムが好きで、だれかと一緒に楽しみたいという思いを持っている人。

・自分の好きなことを押し付けるのではなくて、相手の人の気持ちに寄り添い、その人の要望もそのまま受け入れられること。相手とフラットな気持ちでつながれる人。

・必要なサポートはヘルパーの方に安心してお任せをして、パートナーはミュージアムで楽しく快適に快適に過ごせることを意識する。

コーディネーターの活動内容

その後、プログラムは「コーディネーター」の活動紹介に移ります。
以下はコーディネーターについての紹介の概要です。

<コーディネーターとは?>
・ミュージアムに伴走して、誰もが安心して利用しやすい環境やプログラムをつくる人

<コーディネーターの活動>
・鑑賞プログラムやトークイベントにおける情報保障のアドバイス
・ミュージアムスタッフに対するアクセシビリティ研修の企画や講師

<活動紹介>
・体制:当事者コーディネーター(視覚障害者)、コーディネーター(みんミプロジェクトメンバー)、学芸員、みんミ事務局スタッフ
・概要:さいたま市立漫画会館のギャラリートークを体験し、意見交換を行う
・事前準備:みんミの活動について知る
・活動当日:顔合わせ、施設見学、ギャラリートーク体験、触る資料の体験、フィードバック等 全2回
・参考レポート:https://minmi.ableart.org/activity/activity_coordinator202303/2023/

続いて、2022年度に「コーディネーター」として実践に取り組んだ佐々木さんに、活動のお話しを伺いました。

佐々木さんは、2022年に東京都美術館で開催されていたフェルメール展の関連プログラムで、見えない人と見える人が一緒に作品を楽しむ鑑賞会へ参加したことをきっかけに、全盲になってはじめてミュージアムに訪れたことが、大きな転機だったと話します。さまざまな人とコミュニケーションを取りながら、楽しく鑑賞ができる可能性を実感したことで、こうした活動をやってみたいという動機につながったそうです。

今回のコーディネーターの活動では、最初の段階では自分の役割がしっかりとイメージできず、手探りの状況だったこと。結果的に障害のある人との接点がないミュージアムの学芸員の方と、アートの鑑賞機会が少ない当事者が出会うことで、どうしたらもっと鑑賞を楽しむことができるかと、ともに考えていく足掛かりになったことを振り返ります。

そして、ご自身が考えるコーディネーターの役割や、活動する上で大切なポイントを、以下のように挙げられました。

・障害のある当事者と接した機会の少ない学芸員や高校生の参加者に向けて、「何を聞かれても気にならないので、失礼だと思わずになんでも聞いてほしい」ことを事前に伝えた。その結果、お互いに遠慮なく意見を伝え合うことができ、充実した意見交換ができた。

・堅苦しい言葉を使わずに、ときには冗談を交えながら、意識的に場を和ませるコミュニケーションを取ったことで、ポジティブな雰囲気のなかで進めることができた。

ギャラリートークで学芸員の説明を聞きながら、鑑賞をする様子。

撮影:井上幸子

地元の高校生たちとの振り返りの様子。

撮影:井上幸子

その上で、佐々木さんからは活動のなかで感じた難しさや課題感についても、お話しいただきました。

・視覚障害者のなかには、作品の視覚情報を言葉で説明されるだけで楽しめる人もいるが、自分自身は作品に触って楽しみたいと感じるため、できればそうした環境が整うことを願っている。

・作品に触れるだけではなくて、人とのコミュニケーションを介した鑑賞ができると嬉しい。いろんな人が見た作品の印象や感想を、言葉として聞くだけでも、楽しく鑑賞できることを伝えていけたら、ミュージアムも受け入れやすく感じるのではないか。

・ミュージアムごとの現状に応じて、できる範囲のことを工夫してもらえたら良い。触れる作品も予算のかからない材料でつくられた簡単な模型でもよい。ミュージアムにハードルを感じさせないことも大切だと思うので、その点は当事者側も意識できるとよいと思った。

佐々木さんからは、実践を通してミュージアムが当事者コーディネーターと出会うことで「なんかできそうかも!」と感じてもらえること。障害のある当事者でミュージアムに訪れた機会が少ない人が「なんか楽しめそうかも!」と思ってもらえること。そうした想いのきっかけを、みんミの活動を通して、肩肘張らずに、和気あいあいと築き合っていけると良いのではと述べられました。

レポート:水野拓哉(みんなでミュージアム事務局スタッフ)

みんミは、活動をともにするパートナーとコーディネーターを募集しています。
障害のある人をはじめとする、ミュージアムに行きづらいと感じている人が、気軽にミュージアムにアクセスできる環境づくりや仕組みを、一緒に考えて、活動していきませんか?

以下のページより募集の詳細を見ることができます。ぜひご覧ください。https://minmi.ableart.org/news/boshu/2023/